映画「男と女」Un homme et une femme

Catégories : MEMO-雑記, 1965-1969

VINCENT DELERM ヴァンサン・ドレルムの”DAUVILLE SANS TRINTIGNANT”という曲は、クロード・ルルーシュ監督の映画「男と女」を下敷きにしていて、途中に主演のジャン=ルイ・トランティニャンのモノローグを入れています。(→VINCENT DELERMアルバムレビュー
ということで、今回はその大好きな映画「男と女」(1966)の話を。

もやがかったブルーグレーや白黒が印象的な美しい映像。「ダバダバダ…」を始めとするFRANCIS LAIの音楽、ボサノヴァ好きフランス人歌手PIERRE BAROUH ピエール・バルーのフレンチボサ。粋で軽妙なセリフと、ちょっとかっこ悪いけどおもしろいセリフ。アンニュイな雰囲気、印象に残る数々のシーン、キャスティング等、あらゆる点でいい映画だなぁとつくづく思います。

このフィルムは、カラーの映像と、そうでない映像が切り替わります。(ルルーシュ監督は他の作品でもやっているので、お気に入りなんでしょう。)
最初に「男と女」を見たのはビデオでしたが、映画館でリバイバル上映されたのを見にいったら、ビデオでは白黒だったシーンに、セピアや青などの色がついていました。モノクロにカラーフィルタをかけた状態です。印象が全く違ったので驚いて、映画館で見直してよかったな、と得した気分になりました。
1966年公開当時も色つきだったのか、気になります。

幼い息子を残して妻に先立たれたカーレーサーと、スタントマンの夫を失い幼い娘を育てるスクリプトガール(映画撮影の記録係)が知り合うけれど、女は亡き夫のことが忘れられず…という話で、名場面はいくつもありますが、PIERRE BAROUHが演じる亡き夫と女が雪の中を転げまわって遊ぶ本当に楽しげで幸せそうなシーンや、子供に好き勝手しゃべらせてアドリブで撮ったというレストランの食事等が印象に残っています。
ドーヴィルで印象的なのはこんな場面です。
・・・モンテカルロ。ルマンのレースでの優勝を祝うパーティーで「男」のもとへ届く、「愛しています」の電報。
再会の場面を想像して粋なセリフをあれこれ練りつつ、レースで使った車に乗りこんで「女」のもとへ走るが、アパートに着くと彼女はいない。姑息な手を使って大家から居所を聞き出し、ほの暗いドーヴィルの海辺で、彼女(+自分の息子と女の娘)を見つける。
そこで子供のように楽しそうにスポーツカーのヘッドライトを明滅させて合図を送ると、女(と子供たち)が気づいて駆け寄ってくる。
そしてテーマ曲をバックに、抱き合いながらクルクル回転する2人(子供2人も同じく回転)・・・

雪の中を転げまわってじゃれあうとか、男女が抱き合ってクルクル回るとか、ちょっと聞くと笑ってしまいそうな「ありがち」な場面なのに、新鮮味があります。
躍動感ある音楽と映像で感動をそそる回転のシークエンスも、親の後ろで子供まで頑張って回っているあたりがおかしくて、うまく崩すなぁと笑ってしまいます。

さて。男(Jean-Louis)を演じるのは、JEAN-LOUIS TRINTIGNANT ジャン・ルイ・トランティニャン。
女(Anne)は、大好きな女優ANOUK AIMEE アヌーク・エメ。彼女についてはLubieメモ*ANOUK AIMEEに書いています。
Anneの亡き夫役は、PIERRE BAROUH ピエール・バルー。ボサノヴァ好きなフランス人ミュージシャンで、この映画でもサンヴァ・サラヴァなどを演奏しています。
Anneと元夫の生活を描いた回想シーンは、どれも本当に幸せそう。アヌーク・エメとピエール・バルーは、この映画をきっかけに実生活でも結婚します。(魔法が切れてしまったのか、のちに離婚しますが。その後ピエール・バルーは日本に住んでいたこともあるそうです。)

続編「Un homme et une femme, 20 ans deja (1986) 」は、好みではないですが、ある意味、面白い映画です。プロデューサーとなったAnneが、娘を主演にして「男と女」で起きた出来事を映画化するという設定で、撮影の種明かしのようなことをしています。
20年経ってもANOUK AIMEEは相変わらず素敵。娘役のEVELYNE BOUIX(エヴリーヌ・ブイックス)はテレビをメインに活動する女優ですが、アヌークとよく似ていますね。
二人は、NADINE TRINTIGNANTが監督した”L'ILE BLEUE” (2001 TV) でも共演しています。ナディーヌはJEAN-LOUIS TRINTIGNANTの元妻で、娘で女優のMARIE TRINTIGNANTは彼らの娘です。

2003年8月、このTRINTIGNANT元夫妻をニュースで頻繁に見かけることになりました。マリー・トランティニャンが、ロックグループNOIR DESIRのBERTRAND CANTATとの喧嘩で殴られ、他界したからです。
急にいなくなってしまったマリーのニュースを聞いて、ふと「Ponette 」(1996) を思い出しました。小さな女の子ポネットが、母親が事故死したことを理解できず、会う方法を頑なに探し続け、最後に天国の母親に会って、ようやく事実を受け入れるというストーリーです。その映画で、可愛いポネットがママン、ママンと探しまわる天国の母親役が、マリー・トランティニャンだったんです。
脱線して悲しい話になりましたが...。ANOUK AIMEEは皺が増えたものの凛としていて、21世紀になっても舞台等で元気に活動しています。

そういえば「LA BONNE ANNEE (1973)」の邦題は「男と女の詩」ですが、「男と女」の続編ではありません。フランス語の原題の意味は、この映画のキーワードである「新年」です。LINO VENTURA リノ・ヴァンチュラ(アラン・ドロンともよく共演している渋い俳優)が主演する、全くの別物です。
「男と女」と同じくカラー/モノクロを切り替えているし、音楽はこの監督お気に入りのフランシス・レイだし、映画の中に「男と女」が出てくるし…と、つながりは濃密なんですが、二匹目のどじょう狙いな雰囲気を露骨にかもし出すとは…。さすが邦題。
原題と無縁の邦題をあげるときりがありませんよね。関係者が興行的によさそうなものを相談して邦題を決めてるんだよ、と渋谷の映画館で働いていた友人が言っていました。
90年代の話ですが、恋、愛、パリ、フランスなどをタイトルに入れると客足が伸びるんだ、とも教えてもらい、どおりで似たような邦題が増えるわけだな、と思っていました。
まぁ、中には見事なものや、突飛すぎて笑えるものもありますから、それはそれでいいのかもしれません。

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