CAYMMI VISITA TOM – DORIVAL CAYMMI & TOM JOBIM
★ / 5
サウダーヂ!晴れた日の夕暮れにピッタリ
ドリヴァル・カイミとアントニオ・カルロス・ジョビン(トム・ジョビン)という世代の違う二人の1964年の初共演作。タイトル通り、カイミ一家がトムの家に立ち寄って何気なく演奏したかのようなくつろいだ演奏で、物憂げで切ないようななんともいえない雰囲気です。これがサウダーヂっていうやつかなと思います。夕暮れ時にぴったりなアルバムです。
のちにMPBで活躍するカイミの子供達(ナナ、ドリ、ダニーロ)だけでなく、奥さんのステラも珍しく歌っていて(9.Cancao Da Noiva)、いっそう「家族でトムの家にふらっと寄った」感じを強めています。ステラの声は娘ナナと共通点があり、母性的で切ない感じがします。
トムが歌っているのは2曲だけですが、彼のピアノとドリのヴィオラォン、ダニーロのフルートによるインストゥルメンタルの Berimbau も聴きごたえがあります。
トムとドリヴァルの唯一のデュエット曲 5.Saudades Da Bahia は、ハーモニーがぴったりはまりすぎていなくて、ゆるい感じ。ボサノヴァ的で最高です。
ナナはこのアルバムがデビュー作らしいです。声は瑞々しくても歌いっぷりは堂に入っている感じ。Tristeza De Nos Doisでは情緒たっぷりにのびのびと、8.Sem Voceではしっとり歌っています。3.Inutil Paisagemは、浮世離れした感じ。空中をまっすぐ突き進むような声で「空はなぜこんなに広いの、海はなぜこんなに大きいの」と歌うのを聴くと、壮大な風景が目の前にざーっと広がります。
「バラよりうつくしいものはない」とドリヴァル・カイミが歌うDas Rosasは、バラ(とそれに象徴されるいろいろ)に憧れを抱くブラジル人青年を描いています。が、同じ曲をボサノヴァ好きフランス人ピエール・バルーがフランス語歌詞で歌うと("Des Roses" デ・ローズ)、バラと女性を愛するドンファンの世界。このフレンチバージョンと聴き比べると、カイミのオリジナルのふんわりした曖昧さ、素朴さ、サウダージ感が際立ちます。
スタン・ゲッツのジャズサンバ等でジャズボサになじんでいた私がブラジル音楽(ボサノヴァ)中毒になったきっかけは、このアルバムです。クレジットカードでネットで買う習慣がまだなかった学生の頃のCD探しは、体力と勘と所持金勝負でした。もしCAYMMI EM FAMILIAや、ジョビンのインストアルバムを先に聴いていたら、ここまではまることにはならなかったと思います。
2.So Tinha De Ser Com Voce (A.C. Jobim / A.Oliviera)
3.Inutil Paisagem (A.C. Jobim / A.Oliviera)
4.Vai De Vez (R.Menescal, Lula Freire)
5.Saudades Da Bahia (D.Caymmi)
6.Tristeza De Nos Dois (Duval, Bebeto, Mauricio)
7.Berimbau (B.Powell / V. de Moraes)
8.Sem Voce (A.C.Jobim / V de Moraes)
9.Cancao Da Noiva (D.Caymmi)
2.ソ・チーニャ・ヂ・セール・コン・ヴォセ/あなたで無ければ♪Tom Jobim
3.イヌーチル・パイザージェン/無意味な風景♪Nana & Dorival Caymmi
4.ヴァイ・ヂ・ヴェス/戻ってこないで – instrumental
5.サウダーヂス・ダ・バイーア/懐かしのバイーア♪Tom& Dorival
6.トリステーザ・ヂ・ノス・ドイス/ふたりの悲しみ♪Nana
7.ビリンバウ – instrumental
8.セィン・ヴォセ?あなたなしで/あなたなしには♪Nana
9.カンサォン・ダ・ノイヴァ/花嫁の歌♪Stela Caymmi
«カイミ・ヴィジタ・トム»ドリヴァル・カイミ&アントニオ・カルロス・ジョビン(トム)
1964