GETZ/GILBERTO

4.5 / 5
ジルベルト夫妻とジョビンが参加したスタン・ゲッツのジャズサンバシリーズ

テナーサックス奏者スタン・ゲッツが、ボサノヴァの第一人者といわれるブラジルのアントニオ・カルロス(トム)・ジョビンジョアン・ジルベルトアストラッド・ジルベルトと1963年3月に録音した有名盤。レーベルはジャズのVerveで、ジャズ売場にあるブラジルものの中で最も知名度が高いと思います。
ルイス・ボンファらとの”Jazz samba encore!”にひき続き、ジャズとブラジル音楽が溶け合ったジャズボサアルバムです。
ベースはトミー・ウィリアムス。ミルトン・バナナのドラムもいい味を出しています。

このアルバムのリリースで、一時下がり気味だったボサノヴァ熱がアメリカ他各国で再燃したといわれています。さらに、アストラッドが英語ヴォーカルで歌う1曲目の「イパネマの娘」(ジョビン作曲)がシングルカットされ、ミリオンセラーヒットを記録して、それを機にアストラッドがアメリカで人気歌手になったそうです。
ジョアンの妻だったアストラッドが急に歌うことになったいきさつについて逸話がいろいろありますが、宣伝のためにねつ造されたものが多いようです。

アストラッド・ジルベルトの歌を聴くと、Desafinado ヂサフィナード(調子外れという意味)が思いうかびます。「歌のうまい下手は重要じゃないんだよ」という歌詞の曲です。
美声で声量がある歌手が音程コントロールしながら感情をこめて歌うのが「歌がうまい」であり、歌はうまい方がいい、という音楽の常識にとらわれない、ボサノヴァならではの個性を言い表しているような歌詞です。ヂサフィナードな歌い方

くつろいだ演奏からはまるで想像もつきませんが、このアルバムの制作時はかなり険悪な雰囲気だったそうで、「スタン・ゲッツのサックスが前に出すぎでボサっぽくない、ボサノヴァの歌はポルトガル語じゃなきゃだめだ、アストラッドに歌わせるな」などと怒るジョアン・ジルベルトと、負けずに主張の強いゲッツが衝突し、ジョビンが通訳で何とか仲介したといわれています。ゲスト扱いなのにそんな苦労をしていたとは…。
英語ヴォーカルに抵抗がなくアメリカにも進出したジョビンやアストラッドとは違い、ジョアン・ジルベルトは職人のようにこだわりを大切にするアーティストなんだなと感じます。そんな話を聞くとちょっと複雑な気分になりますが、アルバムは緊張感とリラックス感のバランスが絶妙で、とてもいいです。

1. Garota de Ipanema (The Girl From Ipanema) イパネマの娘
2. Doralice ドラリセ
3. P’ra Machucar Meu Coracao プラ・マシュカー・メウ・コラソン
4. Desafinado デサフィナード
5. Corcovado コルコヴァード
6. So Danco Samba ソ・ダンソ・サンバ
7. O Grande Amor オ・グランジ・アモール
8. Vivo Sonhando ヴィヴォ・ソニャンド
Verve

«ゲッツ/ジルベルト»

1963 STAN GETZ & JOAO GILBERTO - feat.ANTONIO CARLOS JOBIM, ASTRUD GILBERTO

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