JOAO GILBERTO

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子守唄のような心地よさ

ギター+歌にドラムだけで、 「ちょっとあわせてみよう」と始めたかのような雰囲気。ゆりかごのようなベース音に、寝言のようなフレーズが繰り返される曲「ウンディユ」や、内緒話のような「三月の水」の、眠れといわんばかりの心地よさ。弦の上を指が滑る音や微妙な声のふるえや舌の音まで聴こえる臨場感のある音…。すぐそばで何気なく演奏が始まったような感覚になるアルバムです。
ジョアンがやすやすと優雅に弾いているから簡単そうに聞こえるけど、弾くのは難しいそうですね。表情力が豊かで、ギターひとつでよくそこまでと驚かされます。

拍の前や後にずれるヴォーカルが生む揺らぎ感、歌詞の代わりに繰り返される「ウンディユ」やら「ボン、ボン」などのフレーズ、独特のリズム、静寂感。
このアルバムは独特でとっつきにくいという人もいますが、ジョアンが好きな人には、個性が凝縮されたたまらない1枚だと思います。

・・・スタジオでジョアンの妻ミウシャがうたた寝しているところへジョアンとドラマーが入ってきて、起こさないように静かに演奏を始める。ハイハットにやさしく触れるブラシ音、ささやくようなヴォーカル、変化するギターの音色。
途中で目覚めたのに寝たふりして聴き続けていることに気づいた2人は徐々にテンポをあげていき、9曲目が終わったところでジョアンが妻の頭にそっと触れて一言、さあ起きて一緒に歌おう
・・・なんて妄想が浮かびます。
ミウシャは最後の1曲「イザウラ Izaura」しか参加していません。「ゲッツ・ジルベルト・アゲイン」でも録音されているジョアンとのデュオ曲、好きです。

1. Aguas De Marco 三月の水
2. Undiu ウンディユ
3. Na Baixa Do Sapateiro バイーア(靴屋の坂道で)
4. Avarandado 夜明けのベランダ
5. Falsa Baiana 偽のバイーア娘
6. Eu Quero Um Samba 喜びのサンバ
7. Eu Vim Da Bahia バイーア生れ
8. Valsa ベベウ
9. E Preciso Perdoar 許してあげよう
10. Izaura イザウラ (feat.Miucha)

«三月の水»

1973 Joao Gilberto, Heloisa Buarque de Hollanda(Miucha)

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