LES ELLES

3.5 / 5
ファンタジックな可愛さと、きわどいユーモア

les elles レゼル

フランスNormandie(ノルマンディ地方)出身の個性派女性ユニット、LES ELLES(レゼル)。「彼女ら」という人称代名詞のユニット名からして癖がありそうだと思いましたが、中身も強烈です。

手書きの文字とイラストで飾られた歌詞カードは、可愛くも見えますが、ちょっと不気味。サーカスやメリーゴーランドを思わせる幻想的でノスタルジックな音楽と、子供のようなストレートで奔放な歌い方。一見キュートで可愛く、パーティーのような楽しさも感じられます。

サーカスを思い出させる雰囲気という点では、ミレーヌ・ファルメールやロベールに通じるといえなくもありません。が、歌詞も考えると、レゼルは、きわどいブラックユーモアというか、思ったことを何でも口にする、無邪気ゆえに残酷な子供のような印象が強いです。
微妙な話題でも性的なことでも固定概念を持たない子供のようにあっけらかんと扱っているのでしょうが、ブラックさを感じます。日本盤が出ているようなので歌詞訳もあると思います。翻訳作業微妙でおもしろかっただろうな。

疲れているときは聴こうと思わないし、リピートしたくはありません。嫌いなわけじゃなく、独特の世界を極めていてすごいと思うのですが、1回聴いたらしばらくはいいかと思ってしまいます。そのあたりはギャスパー・ノエ監督の映画と似ているかもしれません。
さらに、自己完結した独特の不思議(不気味)な世界、懐かしさ、強烈なインパクト、というキーワードでつながるんだと思いますが、ルイ・マルの『地下鉄のザジ』や、J.-J.ベネックスの『ベティー・ブルー』、トッド・ブラウニングの『フリークス』、『未来世紀ブラジル』他のテリー・ギリアム映画なども思い出します。
可愛さと怖さ。すごいけど、たまにしか聴かない。何だか複雑な気持ちになるアルバムです。きわどいもの愛好家にはおすすめです。

このアルバムは、PARIS COMBO(パリ・コンボ)と同じBoucherie Productions(ブシュリ=肉屋)のレーベルのひとつであるChantons sous la truieから出ています。「雨に歌えば Chantons sous la pluie」のもじりで、「豚に歌えば」という意味です。
2作目は、本作同様サーカスや童話を連想させる感じですが、3作目Pamela Peacemakerは実験色が濃く、チェロやピアノ等と豪快なサンプリング音が組み合わせられています。

1.Ah Si J’Etais Riche
2.Krik Manivelle
3.Nouche
4.Negresse
5.Quand Je S’rais Vieille
6.Water Closets
7.Orthopedia
8.Y’a un Jdi Gargon
9.Guiliguili
10.Simone
11.Tonton Amedee
12.Tom
13.L’Amerloc
14.Roma
15.Une Elle
16.Made in Normandie
17.Sale Tempo Pour Les Gras
1.もしもわたしがリッチなら
2.クリック・マニヴェル
3.ヌーシュ
4.ネグレス
5.歳老いても
6.ウォーター・クロゼット
7.オルトペディア
8.素敵な少年
9.こちょこちょ
10.シモーヌ
11.トントン・アメデ
12.トム
13.ラメルロック~アメリカ野郎
14.ローマ
15.ユネル
16.メイド・イン・ノルマンディ
17.うっとうしい天気

«ノルマンディの贈り物»

1995 Pascaline Herveet, Sophie Henry, Sarah Auvray, Christine Lapouze

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