CAYMMI VISITA TOM カイミ・ヴィジタ・トム

Catégories : ブラジル:ボサノヴァ,MPB等 , おすすめ盤 , 1960-1964 , ANTONIO CARLOS JOBIM (TOM) , CAYMMI(DORIVAL,NANA)

カイミ・ヴィジタ・トム / ドリヴァル・カイミ&アントニオ・カルロス・ジョビン

DORIVAL CAYMMI & ANTONIO CARLOS JOBIM

物憂い夕暮れ ★5

ドリヴァル・カイミアントニオ・カルロス・ジョビン(トム・ジョビン)という世代の違う二人の1964年の初共演作。タイトル通り、カイミ一家がトムの家にふらっと立ち寄って何気なく演奏したかのようなくつろいだ雰囲気、物憂げな演奏、情緒ある歌。サウダージをしみじみ感じられる、夕暮時にぴったりなアルバムです。

のちにMPBで活躍するカイミの子供達(ナナ、ドリ、ダニーロ)だけでなく、奥さんのステラも珍しく歌っています。それがまた「家族でトムの家に寄った」雰囲気を強めています(9.Cancao Da Noiva)。ステラの声は娘ナナと共通点があり、母性的で切ない感じのヴォーカルです。
トムが歌っているのは2曲だけですが、彼のピアノとドリのヴィオラォン、ダニーロのフルートによるインストゥルメンタルの Berimbau も聴きごたえがあります。
唯一のトムとドリヴァルのデュエット曲5.Saudades Da Bahiaは、ハーモニーがぴったりはまりすぎていなくて、ゆる~い感じ。ボサノヴァ的で最高です。

ナナはこのアルバムがデビュー作らしいですが、声は瑞々しいながらも歌いっぷりはすっかり堂に入っています。Tristeza De Nos Doisでは情緒たっぷりにのびのびと、8.Sem Voceではしっとりと歌っています。3.Inutil Paisagemでの浮世離れしたヴォーカルには、すごみすら感じます。空中をまっすぐ突き進むような声で「空はなぜこんなに広いの、海はなぜこんなに大きいの」と歌うのを聴くと、壮大な風景が目の前にざーっと広がります。
大きなサングラスを見るとミッシェル・ポルナレフの”Tout tout pour ma cherie...”が鳴り響く私の脳では、広大な風景を見るとこの曲が自動再生されます。

「バラよりうつくしいものはない」とドリヴァル・カイミが歌うDas Rosasは、バラ(とそれに象徴されるもの)にほのかな憧れを抱くブラジル人青年を描いています。が、同じ曲をボサノヴァ好きフランス人ピエール・バルーがフランス語歌詞で歌うと("Des Roses" デ・ローズ)、バラと女性を愛するドンファンの世界。このバルーのフレンチバージョンと聴き比べると、カイミのオリジナルの曖昧さ、純朴さ、切なさが際立ちます。

スタン・ゲッツのジャズサンバ等でジャズボサになじんでいた私を、かれこれ15年以上前にブラジル音楽(ボサノヴァ)中毒にしたのは、このアルバムです。明るいサンバ系が好きな人は「メランコリックすぎる」、歌詞のひねりを求める人は「ボサの歌詞は物足りない」と感じるかもしれませんが、私にとっては思い入れのあるアルバムです。
大きなCD屋でもブラジル音楽売場が小さく、ネットショップどころかネット自体今ほど普及していなかった当時、CD探しは体力と勘と所持金勝負でした。所持金に限界のある学生時代の私が、もし同じカイミのCAYMMI EM FAMILIAや、ジョビンのインストアルバムを先に聴いていたら、ここまでブラジル音楽にはまることにはならなかったでしょう。


1964

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