Breakfast on the Morning Tram – Stacey Kent
★ / 5
やっと出た、しかもブルーノート
彼女自身のアルバムが聴きたいと思って数年。Jazzの名門Blue Noteレーベルと契約したステイシー・ケントのアルバムが2007年9月にリリース。やっと…です!
このブルーノートでの1作目は、今までのアルバムとは違い、オリジナル曲が4曲入っています([1],[4],[7],[9])。作曲はStaceyの夫Jim Tomlinson、作詞はKazuo Ishiguro(日本生まれのイギリス作家 石黒一雄 カズオ・イシグロ)です。
他の選曲も相変わらずよくて、フランス(セルジュ・ゲーンズブールの[3]、[11])、ブラジル・ボサノヴァ(セルジオ・メンデスの[5]、バーデン・パウエル+ヴィニシウス・ヂ・モラエス+ピエール・バルー(フランス人)共作の[6])が入っているところがまた好み♪計3曲をフランス語で歌っています。
“Samba Saravah”
このアルバムでのアレンジはもちろんゲーンズブール自身やジェーン・バーキン等とは別世界ですが、原曲のイメージがとても活きています。アンニュイでクールな歌詞の[3]は、心地いいテンポでスイングし、ヴォーカルもさらっと流す感じ。雨と別れの切なさがただよう[11]は、ゆったりしたアレンジで、ギターと一緒にしっとり歌っています。
[6]Samba Saravahは、以前書いたフランス映画『男と女』の中で使われている曲です。ブラジル音楽-ボサノヴァの有名ミュージシャン達とフランス人ミュージシャンのコラボ作で、歌詞はフランス語。
ラストがWhat a Wonderful Worldというのもたまりません。ルイ・アームストロングの歌で有名な曲ですが、個人的にはTerry Gilliam テリー・ギリアム監督の”12 Monkeys”を思い出し、不気味な薄笑いを浮べてしまいます。
あの感動的なほどポジティブな「この素晴らしき世界」も、テリー・ギリアムが映画のエンディングで使うと、シニカルなブラックユーモアに満ちた意味深な曲に聴こえてきてが浮かんでしまうんだな…と妙に感心させられました。モンティ・パイソンとか「未来世紀ブラジル」の頃のテリー・ギリアム、よかったなぁ。
それはさておき、ステイシー・ケントのヴォーカルは相変わらず素敵。低い声で歌う時の強さ、重さ、けだるさが気のせいか少し増したような気もします。
メジャーレーベルに移籍し、世界中をツアーで飛び回り、近々ちょろっと来日するステイシー・ケント。今後はアルバムをたくさん出していくでしょうね。来日コンサートも増えそうな気がします。楽しみです。
2. Landslide
3. Ces Petits Riens
4. I Wish I Could Go Travelling Again
5. So Many Stars
6. Samba Saravah
7. Breakfast On That Morning Train
8. Never Let Me Go
9. So Romantic
10. Hard Hearted Hannah
11. La Saison des pluies
12. What A Wonderful World
2. ランドスライド
3. 何でもないこと
4. トラベリング・アゲイン
5. ソー・メニー・スターズ
6. サンバ・サラヴァ
7. 市街電車で朝食を
8. ネヴァー・レット・ミー・ゴー
9. ソー・ロマンティック
10. ハード・ハーテッド・ハンナ
11. 雨の季節
12. この素晴らしい世界
“What A Wonderful World”
«市街電車で朝食を»ステイシー・ケント
2007 Stacey Kent (vo), Graham Harvey (p, Fender Rhodes), John Parricelli (g), Dave Chamberlain (double bass), Matt Skelton (drums,perc.), Jim Tomlinson (ts, as, soprano sax, fl, arrangements)