PRINCESSE DE RIEN – RoBERT

4.5 / 5
ウィスパーヴォイスの盤と、似て非なるNAIVE盤

ロベールのセカンドアルバムは、Princesse de rien(虚無王女)というタイトルのイメージどおり、孤独感が霧のように全体を覆っていて、メランコリック。一人遊びしている子供や、幻想的なヨーロッパのおとぎ話や、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』や、クシシュトフ・キェシロフスキの『ふたりのベロニカ』などを連想させる独特の雰囲気で、嵐、深い森、夜の湖等が似合います。北欧伝統音楽に通じるような憂いあるメロディと浮遊感も私は結構好きで、顔写真だけなのに美しい透明感や孤独感を醸し出しているジャケットもすごいなと思います。

中でも一番イメージをかきたてるのは、昔のヨーロッパ宮廷を連想させるバロック風の曲PSAUME(詩編という意味)。もとは北欧デンマークの伝統音楽なんだそうで、映画「バベットの晩餐会」(Babette’s Feast)の中でも歌われています(歌詞は全く違います)。

ロベールのアルバムは普通のショップであまり見かけませんが、パリの中古CD屋で、このジャケットが上の棚から見下ろしているのに気づきました。フランスで一度も見たことがないマイナーCDがなぜか目立つところに飾られてるので買って帰って聴いてみたら、タイトルとジャケットはほぼ同じなのに、日本で買ったCDと中身が違いました。聴いていた盤と全く違って、切羽詰ったような助けを求めているような(たまにインドっぽく聞こえるような気もする)独特のヴォーカルで、曲、アレンジも違い、よく見るとジャケットにもわずかな差が…。
「夜の間に髪が伸びる日本人形みたいだな、あそこで私を待ち構えていたか?!」というアホな考えで一瞬怖くなりましたが、ロベールのサイトを見て納得しました。
1997年の方はインディペンデントレーベルからのマイナー盤で、新しい方は2000年3月発売のNAIVEレーベル発の新ヴァージョンなんだそうです。この後にも1つ違うヴァージョンが出ていて、日本盤を入れると4種類もあるんだそうです。

2000年発売NAIVE盤は、Robertのファーストアルバム並に楽器の電力消費量が上がり、曲順もかなり違い、この盤にしか入っていない曲もあります。ロベールと知り合ったAmélie Nothomb アメリー・ノートンが詩を書いた[1]L’apel de la succubeもその1つです。
彼女は、日本でのOL経験を元に誇張とユーモアたっぷりに書いた小説「畏れ慄いて(amazon)」他で有名なフランスの作家です。

私は、消え入りそうな可愛いささやきヴォーカル+電力控え目のオリジナル盤の方が断然好きです。そちらの方が統一感があり、ロベールらしい独特の世界が完全に表現されている気がするからです。
クラブで流すなら、テクノ率が高い&怪しさが加わった新ヴァージョンもおもしろいかもしれませんが、ちょっと怖いし冷たい服を着せすぎじゃないかなと感じます。

1997年盤
1.Psaume
2.Triste et sale
3.Dans la cite nouvelle
4.Colchique mon amour
5.Le model
6.Tout ce qu’on dit de toi
7.Nature morte
8.Qui s’aura l’aimer
9.Louis
10.Les couleurs
11.Question de philosophie
12.L’echarpe
2000年再発盤
1.L’apel de la succube
2.Colchique mon amour
3.Princess de rien
4.Louis
5.Le model
6.Tout ce qu’on dit de toi
7.Question de philosophie
8.Nature morte
9.Qui s’aura l’aimer
10.Les couleurs
11.Dans la cite nouvelle
12.L’echarpe
13.Psaume
14.Nickel(Tout ce qu’on dit de toi)
15.Dynamite(remix Nickel)

«プランセス・ド・リヤン»

1997

関連記事

Comment