QUELQU’UN M’A DIT – CARLA BRUNI

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現代のミューズ

モデル生活を送っていたカーラ・ブルーニは、このファーストアルバム”QUELQU’UN M’A DIT”ケルカン・マ・ディについてこう語っていました。

「このアルバムは、ポーズをとっていない、眠りから覚めたばかりの女の子みたいにしたかったの。着飾らず、化粧もしてない、裸みたいな感じに。私、12年間着飾りっぱなしだったから。 」

そんな彼女が飾らずに内面を表現したというこのアルバムが発売されると、フランスで大騒ぎに。 「人気モデルが歌えば中身はともかく話題にはなるよね」という定説があったのに、「モデルのお遊び」どころか、とても完成度が高かったからです。アンニュイ、ノスタルジー、心地よさ、力を抜いたさりげなさ、涼しさと温かみ… この感じがフランス人の好みに合わないはずがないというくらい完璧です。

意表をつかれた批評家はほめたたえ、ラジオでは毎日カーラの歌が流れ、フランス国内でミリオンセラーを記録し、数年でいくつもの盤がリリースされ、彼女の声は、モデルとしての外見以上にフランス中に広まりました。

「天は二物以上を与えるんだな、完璧すぎる」とジャケットを眺めつつCDを聴いていると、完璧な音楽の女神ミューズが思い浮かびますが、インタヴューを読むと、彼女の人間らしい面が垣間見えます。

「自分の曲を作っているときは他の人の曲は聴かない。このアルバムを出した後もしばらく聴いていないの。他の人のすごい音楽を聴いたら、モチベーションが下がるから…。フェレ、ゲーンズブール、ブラッサンス、バルバラ、ディランなんかを聴いたら、自分のアルバムなんかどうでもよくなっちゃうでしょ?自分はいいものを作るんだって思い込まなくちゃならないのに、他人の音楽を聴いたら、くじけちゃう」
知ればしるほど目が肥えて「世の中すでに良いものが出つくしているのに今さら自分が作っても無駄じゃないか」という考えが浮かぶ…というのは、ものを作る人なら一度は体験するんじゃないかと思いますが、このアルバムは、Carlaがそんな考えが浮かびつつもやり通した結果なんですね。ありがたや。

セルジュ・ゲーンズブール(=Lucien Ginsburg)の"LA NOYEE"を含む2曲以外は、全て自作曲。タイトル曲[1]の歌詞は、私も大好きな映画監督レオス・カラックス(『ポンヌフの恋人』『汚れた血』等)と共同制作しています。
アレンジは、フランスで有名なグループTELEPHONEの元メンバーLOUIS BERTIGNAC。彼がこんな繊細で優しいアレンジをするというのも人々の意表をついたようです。曲によってはコードアレンジ、ギター、ベース、ピアノ、メロトロン、オルガン、パーカッションも担当しています。 白黒写真のジャケットも美しいし、つくづく完璧なアルバムです。

2004年に出た日本盤の邦題は「ケルカン・マ・ディ 風のうわさ」。いいですね。
[13]としてケルカン・マ・ディ(レオス・カラックス監督作品)PV(CD Extra)が追加されているそうです。愛聴盤ほど、後におまけつきのCDがリリースされて複雑な気分になります。

1. Quelqu’un M’a Dit [Paroles: Carla Bruni – Leos Carax,
Musique: Carla Bruni]
2. Raphaël
3. Tout Le Monde
4. La Noyée [Lucien Ginsburg (= Serge Gainsbourg)]
5. Le Toi Du Moi
6. Le Ciel Dans Une Chambre (Il cielo in una stanza) [original:Gino Paoli, フランス語歌詞Carla Bruni]
7. J’en Connais
8. Le Plus Beau Du Quartier
9. Chanson Triste
10. L’excessive
11. L’amour
12. La Dernière Minute 
1.ケルカン・マ・ディ 風のうわさ
2.ラファエル
3.みんな(トゥ・ル・モンド)
4.溺れるあなた(ラ・ノワイエ)
5.うらおもて(ル・トワ・デュ・モワ)
6.部屋の中の空(ル・シエル・ダン・ジュヌ・シャンブル)
7.男たち(ジャン・コネ)
8.注目の的(ル・プリュ・ボー・デュ・カルティエ)
9.悲しい歌(シャンソン・トリスト)
10.極端な私(レクセッシヴ)
11.アムール(ラムール)
12.最後の一分間(ラ・デルニエール・ミニュット)

«ケルカン・マ・ディ 風のうわさ»

2002

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