GETZ/GILBERTO 2 (Live)

ゲッツ/ジルベルト#2 (+5) - スタン・ゲッツ、ジョアン・ジルベルト、アストラッド・ジルベルト

・・・ジルベルト夫婦再参加コンサート・・・ ★4

1964年10月9日のカーネギーホールでのコンサートの録音。曲間のスピーチ、観客の拍手や声から会場の広さと雰囲気が伝わってきます。
ゲッツ/ジルベルト」で共演したジョアンとアストラッドのジルベルト夫妻に加え、前作「ゲッツ・オー・ゴー・ゴー」と同じメンバー(ゲーリー・バートン等)も参加しています。
ジョアン・ジルベルトとスタン・ゲッツは相変わらず険悪だったのでしょうが、そんなことは全く感じさせない楽しい雰囲気で、くつろげます。
CD〔GETZ/GILBERTO#2(+5)〕には、アストラッドがヴォーカルで参加した5曲が追加収録されていて(11~15)、例の大ヒット曲「イパネマの娘」も歌っています。
ジョアンのやわらかい声とギターに湧き上がる会場の拍手。控えめに寄り添うJoe HuntのドラムとGene Chericoのベース。海へ向かうイパネマ娘のイメージがいい感じに出来上がってきた頃に、ヨタヨタと走りこんでくるアストラッドのヴォーカル。このライブの彼女の歌は、いつもにましてあやうげです。卒業式で緊張して両手両足が一緒に出てしまう子供を見ているかのようにヒヤヒヤさせられ、When she passes each one she passes goes Aaah...゛と聴くと、こっちもaaah…と脱力してしまいます。
素朴であやしげなこのヴォーカル。初々しさが可愛いし落ち着くという人もいれば、音痴にしか聞こえなくて苦手だという人もいて、好みの別れるところですね。アバタもエクボ、エクボもアバタ。
人間は、驚きや恐怖による心拍数の上昇を恋愛感情のドキドキと勘違いして危険な人に惹かれることがあるといいますが、そう考えると、綱渡りを見ているかのように人をヒヤヒヤさせる感覚は、もしかするとヘタウマ系歌手の武器かもしれませんね?
これを聴いて自分も歌手になろうと思った人、いるんじゃないでしょうか。


1964, Verve

  • 1-4:Stan Getz(ts), Gary Burton(vb), Gene Cherico(b), Joe Hunt(d)
  • 5-10:Joao Gilberto(g), Keter Betts(b), Helcio Melito(d)
  • 11-15:Stan Getz(ts), Joao Gilberto(g), Gary Burton(vb), Gene Cherico(b), Joe Hunt(d), Astrud Gilberto(vo)

1. Grandfather's Waltz グランドファザーズ・ワルツ
2. Tonight I Shall Sleep -With a Smile on My Face 夢のほほえみ
3. Stan's Blues スタンズ・ブルース
4. Here's That Rainy Day ヒアズ・ザット・レイニー・デイ
5. Samba de Monha Terra 我がふるさとのサンバ
6. Rosa Morena ホーザ・モレーナ
7. Um Abraco No Bonfa  ボンファに捧ぐ
8. Bim Bom ビン・ボン
9. Meditation (Meditacao) メディテーション
10. O Pato (The Duck) 鵞鳥のサンバ
11. It Might as Well Be Spring* 春の如く
12. Only Trust Your Heart* オンリー・トラスト・ユア・ハート
13. Corcovado -Quiet Nights of Quite Stars* コルコヴァード
14. Garota de Ipanema-The Girl from Ipanema* イパネマの娘
15. Eu E Voce* エウ・イ・ヴォセ

GETZ AU GO GO スタン・ゲッツ+アストラッド・ジルベルト

ゲッツ・オー・ゴー・ゴー : スタン・ゲッツ・カルテット+アストラッド・ジルベルト

ライブ風効果音入りスタジオ録音?・・・ ★3.5

Cafe au go goでの1964年8月のライヴ録音、ということになっていますが、実は違うようですね。
カーネギーホールのコンサート録音「ゲッツ・ジルベルト #2」と聴き比べても、この「ゲッツ・オー・ゴー・ゴー」がライヴというのはどうも信じられません。

まず、会場の広がりを感じない、いかにもスタジオ録音っぽいクリアな音質。
周りの音も何だか不自然です。演奏中は雑音が一切なく不気味なくらい静かで、観客の反応はあくまで曲間だけ。拍手・歓声も必要以上に派手で、アメリカのホームドラマの効果音を思わせます。
例えば同じ頃の1961年のビル・エヴァンスのライヴ盤”Waltz for Debby”には、グラスのぶつかる音やざわめきが入っていますが、大ホールでの演奏ならともかく、カフェ(バー)でのコンサートならその方が自然ですよね。

一番あやしいと思うのは、あたまから伴奏なしでいきなり始まるアストラッド・ジルベルトのヴォーカル。数ヵ月後のカーネギーホールでのライヴ盤”GETZ/GILBERTO #2”と比べると、妙にリラックスしていて、彼女なりの魅力をしっかり発揮できています。

そういえばウディ・アレン監督・主演の映画で、TVのホームドラマを作っている友人がドラマにニセの笑い声を足すのを見て、ウディ扮する主人公が反発するシーンがありました。友人は、この方がウケて視聴率が上がるんだからいいじゃないか、というようなことを言います。
アストラッド・ジルベルトは英語で歌ってアメリカで成功し続け、かたくなにポルトガル語と自分の音楽にこだわるジョアン・ジルベルトは彼女と65年に離婚し、不遇期、ミウシャとの再婚、メキシコ移住などを経てようやくブラジルに戻ります。
こだわりなく何でもやってしまう方が資本主義ではうまくやっていけるということでしょうか?

アストラッドの「素人から偶然歌手になったラッキーガール伝説」も作り事というのが真相らしいですし…このアルバムも、ライブ風に見せかけるための効果音を足しているんだとしたら、あざといというか….。
まぁそういう怪しさはさておき、ケニー・バレル、チェック・イスラエル、ほぼ無名だった頃のゲーリー・バートンなども参加していて、演奏自体はいい感じです。


1964, Verve
THE STAN GETZ QUARTET FEATURING ASTRUD GILBERTO
Stan Getz(ts), Gary Burton(vb), Astrud Gilberto(vo/1,2,3,5,7,8),Kenny Burrell (g/1,2,3,7),
Gene Cherico(b/1,2,3,5,6,7,10), Chuck Israels(b/4,8,9),
Helcio Milito(ds/1,2,3,7), Joe Hunt(ds/4,5,6,8,9,10)

1.Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars) コルコヴァード
2.It Might as Well Be Spring 春の如く
3.Eu E Voce (Me and You) エウ・エ・ヴォセ
4.Summertime サマータイム
5.Only Trust Your Heart
オンリー・トラスト・ユア・ハート
6.Singing Song ザ・シンギング・ソング
7.Telephone Song ザ・テレフォン・ソング
8.One Note Samba ワン・ノート・サンバ
9.Here's That Rainy Day 雨の日に
10.6-Nix-Pix-Flix シックス・ニックス・ピックス・クリックス

GETZ/GILBERTO - スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト

ゲッツ/ジルベルト - スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト

スタン・ゲッツのジャズサンバシリーズに、ジルベルト夫妻とジョビンが参加 ★4.5

テナーサックス奏者スタン・ゲッツが、ボサノヴァの第一人者といわれるメンバー(アントニオ・カルロス(トム)・ジョビンジョアン・ジルベルトと、その妻アストラッド・ジルベルト)を迎えて1963年3月に録音した有名盤。レーベルはジャズの名門Verveで、ジャズ売場にあるブラジルものの中で最も知名度が高いアルバムでしょう。
ルイス・ボンファらとの"Jazz samba encore!"にひき続き、ジャズとブラジル音楽がいい具合に融合したジャズボサアルバムです。
ベースはトミー・ウィリアムスミルトン・バナナのドラムもいい味を出しています。

このアルバムのリリースで、(一時下がり気味だった)ボサノヴァ熱がアメリカ他各国で再燃したといわれています。
さらに、アストラッドが英語ヴォーカルで歌う1曲目の「イパネマの娘」(ジョビン作曲)がシングルカットされ、ミリオンセラーヒットを記録したという派手なおまけつき。これを機にアストラッドはアメリカで人気歌手になります。
彼女が歌うことになったいきさつについては、シンデレラガール風の逸話がいろいろありますが、宣伝のためにねつ造されたものが多いようです。アストラッド・ジルベルトのデビュー逸話

アストラッド・ジルベルトの歌を聴くと、Desafinado ヂサフィナード(=調子外れ)の「歌のうまい下手は重要じゃない」というフレーズが思いうかびます。美声で声量のある歌手が感情をこめて歌い上げるのがいいという従来の音楽の決まりごとにとらわれないボサ・ノヴァの特性を象徴するかのような歌詞の曲です。
アストラッドは、周りの歌手に習ったり真似たりしながら何となく歌ったら偶然「ヂサフィナード」の体現者になったというか...ヘタウマ系の素人っぽさが、舌足らずの英語とヴィジュアルと声の可愛さとあいまって「これぞボサノヴァの新鮮さだ」と受けたんじゃないかな?と思ったりします。「ヂサフィナード」な歌い方

このアルバムのくつろいだ演奏からはまるで想像もつきませんが、制作時はかなり険悪な雰囲気だったようですね。
スタン・ゲッツのサックスが前に出すぎでボサっぽくない、ボサノヴァの歌はポルトガル語じゃなきゃだめだ、アストラッドに歌わせるな、などと怒るジョアン・ジルベルトと、負けずに主張の強いゲッツが衝突。
ジョビンが通訳で何とか橋渡し役を担ったといわれています。(そんな苦労をしたジョビンはゲスト扱いですが。)
英語ヴォーカルに抵抗がなくアメリカにも進出したジョビンに比べ、ジョアン・ジルベルトは職人のようなこだわりを持った根っからのブラジル人アーティストという感じがします。
実際の話を聞くとちょっと複雑な気分になりますが、アルバムは緊張感とリラックス感のバランスが絶妙で快適です。


1963.03.18-19, Verve
STAN GETZ & JOAO GILBERTO - feat.ANTONIO CARLOS JOBIM, ASTRUD GILBERTO

1. Garota de Ipanema (The Girl From Ipanema) イパネマの娘
2. Doralice ドラリセ
3. P'ra Machucar Meu Coracao プラ・マシュカー・メウ・コラソン
4. Desafinado デサフィナード
5. Corcovado コルコヴァード
6. So Danco Samba ソ・ダンソ・サンバ
7. O Grande Amor オ・グランジ・アモール
8. Vivo Sonhando ヴィヴォ・ソニャンド

アストラッド・ジルベルト ASTRUD GILBERTO ディスコグラフィー

ASTRUD GILBERTO アストラッド・ジルベルト (1940- )ディスコグラフィー

Getz/Gilberto / 1963, Verve ★4.5
feat.ANTONIO CARLOS JOBIM, ASTRUD GILBERTO
ジャズサックス奏者スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルトのアルバムで、A.C.ジョビンも参加しています。「イパネマの娘」がシングルカットされてアストラッドは一躍人気歌手になりました。 
Getz Au-Go-Go / Verve, 1964 ★3.5
"Cafe au go go"での1964年のライヴ録音...ということになっていますが、観客の反応がどうしてもアメリカのホームドラマ効果音風で、謎です。「ゲッツ/ジルベルト」の「イパネマの娘」で急に人気歌手になったアストラッドと、ジャズサンバでヒットを続けるスタン・ゲッツ。ヒット狙いの雰囲気濃厚なこのアルバム、ちょっと細工したんでしょうか。
Getz/Gilberto #2(Live) 1964, Verve ★4
1964年10月9日のカーネギーホールでのライブ録音。CD”GETZ/GILBERTO#2(+5)”には、アストラッドをフィーチャーした5曲が追加収録されています。彼女のヴォーカルはいつもにましてあぶなっかしく、聴いている方がちょっとした緊張感を感じるほど。
The Astrud Gilberto Album おいしい水 / Verve, 1964 ★4
The Shadow Of Your Smile いそしぎ / Verve, 1965 ★3
Look To The Rainbow / Verve, 1965 ★3
ギル・エヴァンスが編曲、指揮したオーケストラとのアルバム。不思議な間のとり方で歌う彼女の歌が頭でループして離れなくなることがあります。ある意味すごい...。
Beach Samba / Verve, 1966 ★3
エウミール・デオダートセベスキーがアレンジを担当したオーケストラとの共演盤。ジャズハーモニカの名手トゥーツ・シールマンスもゲスト参加していますが、彼のハーモニカ&口笛が聴けるブラジル音楽アルバムといえば、エリス・レジーナとの共演盤「ブラジルの水彩画」や、ブラジルプロジェクトシリーズがおすすめ。
A Certain Smile, A Certain Sadness サマー・サンバ+2 / 1967 ★4
with Walter Wanderley
オルガン奏者ワルター・ワンダレイとのアルバム。フカフカ軽いオルガンの音と、ホンニャリしたヴォーカルがよく合っています。
Windy Verve, 1968
September 17, 1969 / 1969
Gilberto Golden Japanese Album / 1969
珍品の雰囲気濃厚。「イパネマの娘」や「いそしぎ」「男と女」といったおなじみの曲を日本語で歌っているというのですから…気にはなります。でも買いたくはない…どこかで偶然貸してもらえないかなぁ。
I Haven't Got Anything Better To Do / Verve, 1970
ゲスト参加したスタン・ゲッツのジャズサンバシリーズから、このアルバムまで、レーベルはずっとジャズの名門VERVEでしたが、次から変わります。
Astrud Gilberto With Stanley Turrentine / CTI, 1971 ★5
アストラッド・ジルベルトのアルバムの中ではこれが一番好きです。透明感、浮遊感、可憐さ、ちょっとした切なさのようなものまで感じさせる、いいアルバムです。
彼女の独特のヴォーカルをバックが優しく包み込んで渾然一体となり、浮遊感ある独特の世界が出来上がっています。
彼女のきわどい魅力を最大限プラス側に向けるとは…魔法です。
DVD Audio版 Astrud Gilberto Now / Perception, 1972
That Girl From Ipanema / Audio Fidelity, 1977
「イパネマの娘」や「ラヴ・フォー・セール」が、フュージョンがかったディスコサウンド版にアレンジされているらしいです。恐るべし、時代の流行。あのホンニャリヴォーカルとディスコ…。えらいことになってるんでしょうか。
Astrud Gilberto Plus James Last Orchestra / 1987 / Polygram
Live In New York / 1996 / Pony Canyon ★3
1989年2月~5月のNYにおけるライヴの編集盤。初期に比べると多少あやうさが減って安定した分、声が酸味を帯びています。とはいえ、アンナ・カリーナ(ゴダール映画のミューズの一人で、のち歌手)のように度肝を抜く激変をとげたわけではなく、デビュー作から何十年も経っているのに、女の子らしいあどけなさを失っていないのには驚かされます。
Temperance / 1997 / Pony Canyon
久々のスタジオ録音盤。マイケル・フランクスやNYヴォイセズが参加。エラ・フィッツジェラルド等のグルーヴ感あふれる名演が思い浮かぶ「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」をアストラッドが歌うと、どういう感じになるのでしょう。
Jungle / Magya, 2002
ボサなどに加え、バート・バカラックの名曲「ザ・ルック・オブ・ラヴ」も入っているらしいですね。この曲のカヴァーとしては、個人的にはフランス人歌手クロディーヌ・ロンジェの舌足らずな可愛いウィスパーヴォイスの印象が強いので、同じく舌足らず気味のアストラッドと聴き比べてみたい気がします。

ASTRUD GILBERTO アストラッド・ジルベルト (1940- )

「ゲッツ/ジルベルト」収録の英語で歌った「イパネマの娘」がシングルカットされてミリオンセラーを記録し、一躍有名になりアメリカ進出した歌手。
ジャズ好きな人の間では多分一番知名度の高いブラジル人ボサノヴァ歌手でしょう。「ボサノバの女王」などと呼ばれたりもしますが、女王ってほど威風堂々なイメージ、ないですよね。よろめきながら歩く女の子とでもいう感じの、ヘタウマともいえる頼りないヴォーカルは賛否両論ですが、手を差し伸べたくなるような初々しい可愛さとリラックス感があるのは確かです。
シンデレラガール風の素敵なデビュー逸話がいくつかありますが、実際は作り話だというので複雑な心境になります。

 :ブラジル音楽;カフェミュージック;ジョアン・ジルベルトの元妻;英語歌詞によるボサノヴァ...

  • おすすめアーティスト・・・ワンダ・サーナラ・レオン、マルコス・ヴァーリ、クロディーヌ・ロンジェ(フランス)、コラリー・クレモン(フランス)、リサ・エクダール(スウェーデン)

  • オリジナルアルバムを買い集める際の参考用に作った、アストラッド・ジルベルトの年代順ディスコグラフィです。
  • タイトルにリンクがはってあるものは私のお気に入り盤です。クリックすると個別ページに行きます。
  • ★(最高5)は個人的おすすめ度です。
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  • アストラッド・ジルベルトのデビュー逸話

    アストラッドが歌うことになったいきさつについてはいろいろな逸話がありますが、宣伝のために捏造されたものが多いようです。

    キッチンで鼻歌を歌っていたら夫ジョアンのところに来たスタン・ゲッツが気に入って採用したという説や、
    夫ジョアンの付添いでスタジオに来て、たまたま歌ったら、結構いいねぇ~と採用されたという説。(友達のオーディションについていった人がスカウトされてアイドルになるという類の話ですね。)
    こういうシンデレラストーリーは信じたいものですが、実際のところ、元々歌手活動していたこともあるアストラッドが、これは大チャンス!と自らを売り込んだという説が有力です。

    ◆"アストラッド・ジルベルトのデビュー逸話"の全文を見る »

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